コラム⑤~契約書は何のために作成するか~
'24.09.26突然ですがクイズです
Aさんはお茶を買うためにコンビニに入りました。
次のうち、Aさんとコンビニの間で、お茶の「売買契約」が成立するのはいつでしょうか?
①お茶をレジに置いたとき
②お茶のバーコードを読み取ったとき
③お茶の代金を支払ったとき
④店員がAさんにお茶を引き渡したとき
正解は…①のときと考えられます。
なぜなら、法律上、売買契約は「売ります」「買います」という意思の合致によって成立するところ、お茶を販売しているコンビニはすでに「売ります」という意思表示をしているため、Aさんがお茶を「買います」という意思表示を黙示的に示している①の時点で、お茶の売買契約が成立したと考えられるからです。
Aさんがお茶の代金を支払うことや、店員(コンビニ)がAさんにお茶を引き渡すことは、契約が成立したことによって生まれた債務に過ぎず、売買契約が成立するための要件ではありません。
契約書は何のために作成するか
前述のとおり、売買契約は「売ります」「買います」という意思の合致によって成立いたします。
つまり、売買契約をする際、必ずしも「売買契約書」のような契約書を作成する必要はないことになります。
それでは、売買契約書を作成する場合があるのはなぜでしょうか?
契約書は契約が成立したことを証明する証拠として作成する
例えば、10月1日にAさんがBさんに代金100万円で時計を売ったとします。
AさんはBさんに同日、時計を引き渡しましたが、Bさんは時計の代金を10月3日に支払うと約束しました。
ところが、3日を過ぎてもBさんは代金を支払ってくれず、時計はAさんからもらったものだと主張しています。
そこで、Aさんは時計の代金を支払ってもらうため、裁判所に訴えることにしました。
上記のような民事裁判では、Aさん・Bさんのような原告・被告が、訴えにおける事実を主張したり、証拠書類を提出したりしなければなりません。
つまり、Aさんが時計の売買という事実があったことを主張した場合に、Bさんがこれを否定した場合、Aさんは証拠によって売買の事実を立証しなければなりません。
そこで、時計の売買についての売買契約書を作成しておけば、Aさんは売買の事実を契約書という証拠によって立証することができ、裁判を有利に進めることができるのです。
したがって、契約書は、究極的には、裁判における証拠書類として活用するために作成するものと言えます。
(ただし、例外的に、金銭債務の保証契約のように、契約書の作成が契約成立のための要件とされている契約類型もあるため、注意が必要です)
契約書を作成しておくと安心
コンビニでお茶を買うとき、わざわざ契約書を作成する方はいないでしょう。
しかし、高額な買い物をするとき、又はお金の貸し借りをするときなどは、契約書を作成しておくことにより、いざというときに証拠書類として活用することができます。
当事務所でも、ケースに応じた契約書の案文の作成や、契約書の内容のチェックなどを承っておりますので、そのようなご要望がございましたら、お問い合わせください。
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