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コラム③~どのような場合に遺言書を作成すべきか~

'24.09.20

「遺言書」とは

「遺言書(いごんしょ又はゆいごんしょ)」とは、自分の死後、財産を誰に譲り渡すかについて書き記した、法律上の要件に従って作成する文書です。

今回は、どのような場合に遺言書を作成しておいた方が良いかについて考えてみたいと思います。


どのような場合に遺言書を作成すべきか

結論から申し上げますと、遺言書はどのような場合でも作成しておいた方が良いと思われます。

なぜなら、遺言書がない場合は法定相続人全員で遺産分割協議をして財産の帰属先を決定しなければなりませんが、遺言書があればその工程をカットすることができるからです。

法定相続人全員で遺産分割協議をするには、場合によってはそれなりの時間・労力・コストを費やします。

したがって、どのような場合でも遺言書は作成しておいた方が良いと考えられますが、以下では特に作成しておいた方が良い場合について記載いたします。


①法定相続人以外の方に財産を譲り渡したい場合

法定相続人とは、ここでの詳細な説明は省きますが、配偶者(必ず相続人となる)・子又は代襲相続人としての孫等(第一順位)・亡くなられた方の親等の直系尊属(第二順位)・亡くなられた方の兄弟姉妹(第三順位)です。

例えば子どもがいるが内縁の夫婦の一方に財産を譲り渡したいと考えたとき、その方は法定相続人ではないため、原則的に財産が帰属することはありません。

したがって、このような場合は遺言書を作成して、財産の受取人として内縁の妻(夫)を指定しておくことが有効です。


②法定相続人間で遺産分割協議を整えることが難しいと考えられる場合

代表的なケースとしては、前妻(夫)との間に子がいるケースです。

前妻(夫)との間の子と、後妻及び後妻との子はいずれも法定相続人であるため、遺産分割協議に参加する必要があります。

遺産分割協議の場で初めて対面するような場合は、必ずしもスムーズに協議が行われるとも限らないので、遺言書を作成しておくことが有効です。

また、配偶者はいるが子がいないようなケースでは、配偶者と親、又は配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となり、遺産分割協議をしなければなりません。

関係性が良好であれば問題ないですが、あまりお付き合いのない場合等は遺産分割協議が上手く整わないことも考えられるため、遺言書を作成しておくことが有効です。

その他、法定相続人の内の一人が行方不明であるケースでは、不在者財産管理人の選任や失踪宣告などのお手続きが必要となってしまうため、やはり遺言書を作成しておくことが有効です。


③法定相続分と異なる割合で法定相続人に財産を譲り渡したい場合

法定相続分はあくまで目安であるため、遺産分割協議においてこれと異なる割合で財産の帰属先を決定することについては問題ありません。

もっとも、そのためには全員が合意する必要があるため、「法定相続分以上は財産をもらいたい」と全員が考えた場合、法定相続分と異なる割合で財産を帰属させるのは困難であると思われます。

例えば配偶者が持ち家を取得できるようにしたいが、他に財産がない場合は他の相続人に法定相続分の財産を帰属させることができず、遺産分割協議で配偶者が家を取得することが難しくなってしまうため、そのような場合に、遺言書を作成しておくことが有効です。


遺留分にもご注意を

「遺留分(いりゅうぶん)」とは、法定相続人の内、配偶者・子又は代襲相続人としての孫・親等の直系尊属が有する(兄弟姉妹にはない)、財産に対して最低限この割合だけは必ずもらえるという権利のことを示します。

例えば、上記①のケースのように、内縁の夫婦の一方に全財産を譲り渡すという遺言書が作成された場合でも、子は全体の財産に対して二分の一の割合で遺留分を有するため、「遺留分侵害額請求」をすることにより、一定の割合で財産を自分のものにすることができます。

この遺留分を考慮せずに遺言書を作成してしまうと、後の争いに発展してしまうおそれがあるため、注意を払いつつ遺言書を作成する必要があります。


遺言書を作成しておくと財産の承継がスムーズ

遺言書を作成しておくことにより、相続人間でもめることなく、また煩雑な手続きに追われることなく、財産の承継がスムーズに行われることとなりますので、一度作成することをご検討されると良いと思われます。



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